Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あらくれ

あらくれ

徳田 秋声

Lisez あらくれ de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 119 451 caractères · 236 écrans

Aozora Bunko

六十一

「帰ってみて、もし行くところがなくて困るような時には、いつでも遣って来るさ」浜屋は切符をわたすとき、お島に私語いた。

停車場では、鞄や風呂敷包をさげた繭商人の姿が多く目に立った。汽車に乗ってからも、それらの人の繭や生糸の話で、持切りであった。窓から頭を出しているお島の曇った目に、鳥打をかぶって畔伝いに、町の裏通りへ入って行く浜屋の姿が、いつまでも見えた。汽車の進行につれて、S――町や、山の温泉場の姿が、段々彼女の頭脳に遠のいて行った。深い杉木立や、暗い森林が目の前に拡がって来た。ゆさゆさと風にゆられる若葉が、蒼い影をお島の顔に投げた。

自分を窘める好い材料を得たかのように、帰りを待ちもうけている母親の顔が、憶い出されて来た。お島はそれを避けるような、自分の落つき場所を考えて見たりした。

六十一

汽車が武蔵の平野へ降りてくるにつれて、しっとりした空気や、広々と夷かな田畠や矮林が、水から離れていた魚族の水に返されたような安易を感じさせたが、東京が近くにつれて、汽車の駐まる駅々に、お島は自分の生命を縮められるような苦しさを感じた。

「このまま自分の生家へも、姉の家へも寄りついて行きたくはない」