Classiques japonais avec furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lisez あらくれ de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 119 451 caractères · 236 écrans
三十一
真実に愛せられることも曽てなかった。愛しようと思う鶴さんの心の奥には、まだおかねの亡霊が潜み蟠まっているようであった。鶴さんは、それはそれとして大事に秘めておいて、自身の生活の単なる手助として、自分を迎えたのでしかないように思えた。駢んで電車に乗ってからも、お島はそんなことを思っていた。
三十一
奉公人などに酷だというので、植源いこうか茨脊負うか、という語と共に、界隈では古くから名前の響いたその植源は、お島の生家などとは違って、可也派手な暮しをしていたが、今は有名な喧し屋の女隠居も年取ったので、家風はいくらか弛んでいた。お島は一二度ここへ来たことはあったが、奥へ入ってみるのは、今日が初めであった。
大秀の娘である嫁のおゆうが、鶴さんの口にはゆうちゃんと呼れて、小僧時代からの昵みであることが、お島には何となし不快な感を与えたが、それもしみじみ顔を見るのは、初めてであった。
おゆうは、浮気ものだということを、お島は姉から聞いていたが、逢ってみると、芸事の稽古などをした故か、嫻かな落着いた女で、生際の富士形になった額が狭く、切の長い目が細くて、口もやや大きい方であったが、薄皮出の細やかな膚の、くっきりした色白で、小作な体の様子がいかにも好いと思った。