Classiques japonais avec furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lisez あらくれ de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 119 451 caractères · 236 écrans
夜はいつでも宵の口から臥床に入ることにしている父親の寝言などが、ふと寝覚の耳へ入ったりすると、それが不幸な旅客の亡霊か何ぞに魘されている苦悶の声ではないかと疑われた。
陽気のぽかぽかする春先などでも家のなかには始終湿っぽく、陰惨な空気が籠っているように思えた。そして終日庭むきの部屋で針をもっていると、頭脳がのうのうして、寿命がちぢまるような鬱陶しさを感じた。お島は糸屑を払いおとして、裏の方にある紙漉場の方へ急いで出ていった。
薮畳を控えた広い平地にある紙漉場の葭簀に、温かい日がさして、楮を浸すために盈々と湛えられた水が生暖かくぬるんでいた。そこらには桜がもう咲きかけていた。板に張られた紙が沢山日に干されてあった。この商売も、この三四年近辺に製紙工場が出来などしてからは、早晩罷めてしまうつもりで、養父は余り身を入れぬようになった。今は職人の数も少かった。そして幾分不用になった空地は庭に作られて、洒落た枝折門などが営われ、石や庭木が多く植え込まれた。住居の方もあちこち手入をされた。養父は二三年そんな事にかかっていたが、今は単にそればかりでなく、抵当流れになったような家屋敷も外に二三箇所はあるらしかった。