Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
Lisez 上杉謙信 (うえすぎけんしん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 102 caractères · 256 écrans
「……ではその声かの? えいえいと喘ぐ声か」
と信玄はまた思い直して、しばらく床几に心を落着けようとしているふうであったが、また突如として、物見頭の望月甚八郎を呼びよせ、
「そちの手より放った物見共、雨宮の渡しや、小森方面の気配など、まだ何も告げて来ぬか。戻ってきた者はおるか」
と、たずねた。甚八郎は、
「まだ一名だに――」と、すこし恐縮して答え、
「自身、見てまいりましょうか」
と、信玄の顔を窺った。が、その時、信玄の感能は何ものに触れたのか、その大きな眼を空へつりあげ、からだも共に、床几からぬっくと起して、
「あら、思いがけなや」
と、ひとり大声にいった。
「まだ妻女山へ襲せた味方からも、何らの伝令もなし、物見もみな帰らぬというに、これへ敵上杉の軍勢の来るいわれはないが……何としてか! ……夥しいあの人馬の音は?」
彼のことばに、幕中の将士もみな耳をたてた。鏘々と甲冑のひびきが聞える。明らかに簇々と兵団の近づくような地鳴りがする。すわと、にわかに信玄のまわりは色めきたった。
「あわてるな」
信玄は、途端に、悠然たるものを示した。彼の顔色とその巨きな恰腹を見るとみな気が鎮まった。