Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lisez 火の扉 (ひのとびら) de 岸田 国士 (きしだくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 467 caractères · 257 écrans

Aozora Bunko

それにもかゝわらず、彼女はそのひと言を言いきるわけにいかなかつた。

「ねえ、おい、ちやんと言えよ。おれが安心するじやないか」

それでも、彼女はおし黙つていた。

「おれといつしよにでも、死ぬのはいやか?」

あゝ、もうおしまいだ、と、彼女は思つた。すると急に全身の力がぬけて、夫のはだが石のように固くつめたく感じられた。

「なぜ返事をしないんだ? そんなにお前は冷淡なのか! お前のすべてはおれのものじやないのか?」

その声の低くはあるが、なんという荒々しさ! 夫は、ぷいと夜着をけつておきあがつた。

康子は、そこで、えりをかきあわせながら、静かにすわりなおす。

「あたくしが返事をしないでいるのは、いゝ加減なことを申しあげたくないからですの。死ぬなんていうことはじようだんに言えることじやございませんあたくしは、自分が死ぬ死なゝいより、第一に、あなたを……」

と、そこまで言つて、もう胸がいつぱいになつた。

「おれのことはおれが考える。お前のことを聞いてるんだ」

「えゝ、ですから、あたくしは、自分の力かぎり、あなたを……あなたのいのちを、おまもりすることしか考えておりません」