Classiques japonais avec furigana
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うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
Lisez 上杉謙信 (うえすぎけんしん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 102 caractères · 256 écrans
(和尚、どこへゆく)
謙信が馬上から訊ねた。僧は林泉寺の宗謙であったが、振り仰いで、
(城主は、どちらへ)
と、反問した。
(されば、戦場へ打立つ門出)
と、謙信がいうと、
(あら、心もとなや)
和尚は一拝したのみで、沿道の群集の中へ立ち去りかけた。
謙信は、急に馬を降りて、近侍の本庄清七郎を呼びたてた。
(いまの和尚を追いかけてゆき、謙信に代って驕慢の罪を詫びてまいれ。そして、一言、謙信のために教えを垂れよと申せ)
(お詫びをして来るのですか)
出陣のやさきである、清七郎は忌々しく思ったが、宗謙のすがたを追って、その旨を伝えた。宗謙は、
(恐縮な)
と、戻って来て、
(教えなど、何も持たぬ。野衲に答え得ることなら、何なりと答えよう)
と、衣の袖を交手して佇んだ。
謙信は、馬を下ったまま、慇懃に師礼を執ってたずねた。
(兵を進めるには、神速を規矩となす、とか申します。――法をお弘めになるには、何を以て規矩としますか)
(兵を進めるには、死を先とする。法を弘むにも、死を先にす。ただ今日の在るすがたみな、生を知って死を知らぬのみ。――何でもないなあ、後と先とのとりちがえだけじゃ)