Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
Lisez 上杉謙信 (うえすぎけんしん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 102 caractères · 256 écrans
煩悩の鴨
煩悩の鴨
弥太郎が示した物は、お濠の鴨だった。鴨の喉首を握って顔の上にさしあげて見せている。
もちろん、鴨は死んでいる。――そういえば今し方、雪風のなかで鉄砲みたいな音がした。ここの大土間に懸けてある鉄砲を持出して、一発に仕とめて来たものかもしれない。
「たいへんな事をやりおった……」
どの顔も、どの顔も、蒼白になってしまい、それに食慾を感じるどころではない。なぜならば、お濠際の高札にも、
鴨捕ること厳禁
と、はっきり書いてあるし、日ごろから主君の謙信のことばにも、
「――濠の水禽も、要害の一ツ」
という事を聞いている。もちろん犯す者は死罪と、先代の主君のときから極まっているものである。
弥太郎は、台所の方へ通りながら、しいんとしている連中を見下ろして、
「誰か、鍋をかけろ。そのまに毛をむしって、おれが料理してくる」
といった。
忠実に、彼は、台所の外へ出て、毛をむしり、肉と骨をほぐして、やがて大皿に盛って来た。
けれど、もう誰も、そこには居なかった。
「……どうしたんだ、皆は」
と、呟いたが、べつだん怪しもうともせず、ひとりで鍋をかけて、ひとりで食って、そのまま寝てしまった。