Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵 (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 185 809 caractères · 369 écrans
心猿
一
その小松谷まで来ると、
「――ここじゃよ、わしの仮住居は、なんと暢気なものだろうが」
青木丹左は、連れて来た朱実をふり顧って、うす髭の生えている上唇を剥いて、にやりと笑う。
「ここですか」
失礼とは思いながら、朱実はつい問い返した。
ひどく荒れている一宇の阿弥陀堂なのである。これが住居というならば、この附近には、堂塔伽藍の空家がずいぶん少なくない。この辺から黒谷や吉水のあたりは、念仏門発祥の地であるので、祖師親鸞の遺跡が多いし、念仏行者の法然房が讃岐へ流されるその前夜は、たしかこの小松谷の御堂とやらにあって、随身の諸弟子や帰依の公卿や善男女たちと、わかれの涙をしぼられたものである。
それは承元の昔の春だったが、今夜は、散る花もない冬の末、
「……おはいり」
丹左は先へ御堂の縁へ上がって、格子扉を押しあけ、そこから手招きをしたが朱実はためらって、彼の好意に従ったものか、ほかへ行って独りで寝場所をさがしたものか、迷っている様子に見える。
「この中は、思いのほか暖かいのだ。藁ござだが、敷物もあるしな……。それとも、このわしまで、さっきの悪者のように、恐い人間と、疑っているのか」