Classiques japonais avec furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans
全く彼は幸子と一緒にいると遊ぶことも出来なければ、自分の仕事も出来なかった。ただ彼女の見える室の中に坐っていらいらしながらぼんやりしているより仕方がなかった。時々それが耐えられなくなると、彼は声を張り上げて幸子の周囲を躍(おど)りながら呼吸の続く限り馳け廻った。すると幸子は意味の通じぬことを口走って上機嫌になる。彼がへとへとになって仰向きに倒れて、「アーア。」というと、彼女も同じように彼の横へ寝転んで、「アー。」という。しかし彼が少しでも手を触れると直ぐ泣き顔をして口をとがらして起き上る。
「御身よ、御身よ。」彼はただそういって見ているより仕方がなかった。
彼は姉の家を去る時、もう此処(ここ)へは帰るまいと思った。
十四
しかし、次の夏またやはり彼は姉の処へ帰ってしまった。彼が姉の家へ着いた時誰もいなかったので、一人茶の間に寝転んで本を見ていた。暫(しば)くすると姉が帰って来て、幸子を背から下ろした。
彼はいきなり幸福を感じた。
「そうら、あれ、誰あれ?」と姉はいって彼を指差した。
幸子は顔を顰(しか)めて、彼を見ながらだんだん後へ退(さが)ってゆくと、上(あが)り框(かまち)から落ちかけようとして手を拡げた。