Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しのふちより

死の淵より

高見 順

Lisez 死の淵より (しのふちより) de 高見 順 (たかみじゅん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 084 caractères · 38 écrans

Aozora Bunko

汽車は二度と来ない

埴輪や明器のような副葬品を

大地へ帰る死を悲しんではいけない

肉体とともに精神も

わが家へ帰れるのである

ともすれば悲しみがちだった精神も

おだやかに地下で眠れるのである

ときにセミの幼虫に眠りを破られても

地上のそのはかない生命を思えば許せるのである

古人は人生をうたかたのごとしと言った

川を行く舟がえがくみなわを

人生と見た昔の歌人もいた

はかなさを彼らは悲しみながら

口に出して言う以上同時にそれを楽しんだに違いない

私もこういう詩を書いて

はかない旅を楽しみたいのである

汽車は二度と来ない

わずかばかりの黙りこくった客を

ぬぐい去るように全部乗せて

暗い汽車は出て行った

すでに売店は片づけられ

ツバメの巣さえからっぽの

がらんとした夜のプラットホーム

電灯が消え

駅員ものこらず姿を消した

なぜか私ひとりがそこにいる

乾いた風が吹いてきて

まっくらなホームのほこりが舞いあがる

汽車はもう二度と来ないのだ

いくら待ってもむだなのだ

永久に来ないのだ

それを私は知っている

知っていて立ち去れない

死を知っておく必要があるのだ

死よりもいやな空虚のなかに私は立っている

レールが刃物のように光っている