Classiques japonais avec furigana
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しのふちより
死の淵より
高見 順
Lisez 死の淵より (しのふちより) de 高見 順 (たかみじゅん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 084 caractères · 38 écrans
抜け毛
執着
砂
今こそそれを開くときが来た
いや やはりそのままにしておこう
その部屋におれはおれを隠してきたのだ
抜け毛
歩いて歩いて
川岸にやっとたどりついたら
頼みの橋が落ちていた
向う岸に渡れないということは
もはや逃げられないということだ
氾濫のあとの逆に水量の減った川のまんなか
ぽつんと立った橋脚に
毛髪がひっかかっている
あれは ひと目で分る 女の抜け毛だ
執着
ハナクソを丸めていると
なかなかこれが捨てられぬ
なんとなく取っておいた手紙のように
このつまらぬものが
生への執着のように捨てがたい
砂
近くの円覚寺に本堂ができた
杖をついて見に行った
大正十二年の大地震で
旧本堂がこわれて以来
ずっと空地のままだった
終戦の年の冬 ひとげのないそこへ
ある朝散歩に行ったら
礎石の間の砂地から
チチチと小さな声が聞えてきた
かすかな声なのに だからかえって私の耳をとらえた
地面に白くおりた霜が朝日にとけて
砂が虫のように鳴いていたのだ
砂のささやきのようであり
つぶやかれた砂上の文字のようであった
再建された本堂の前でいま私は
異様で可憐なその音を思い出した
砂の空地だった方がよかったとも思う
同時に最近のある