Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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こぞうのゆめ

潤一郎ラビリンスV――少年の王国

谷崎 潤一郎

Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans

Aozora Bunko

そうして結局、彼が最後の決心を躊躇させて居るものは、たゞ住み馴れた宿院の生活に対する未練と、上人の訓戒が強いる盲目的な畏敬との外には、何も存在しないのであった。

しかし、此の二つの物は案外執拗に彼の心を把えていた。彼がどうしても山を降りまいと努めるならば、此の二つの感情を、出来るだけ高調するより道はなかった。

「お前は千手丸の言葉を信じて、佛陀の教や上人の警めを信じないのか。勿体なくも佛陀や上人を※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)つきだと云うのか。それでお前は済むと思うのか。」

こう、彼は声に出してまで呟いて見た。浮世は千手丸の云うように、きっと面白い所に相違ない。けれども其の面白さに引かされて、十四年来築き上げた堅固な信仰を、一朝にして抛ってしまってよいであろうか。自分は此の間から、難行苦行に堪えようと云う誓いを立てゝは居なかったか。現世の快楽を得られたにしても、その為めに佛罰を蒙って、来世で地獄へ堕ちるのであったら、十倍二十倍の苦痛ではないか。

「血と云うものは争われない。………」

この文句が、その時ふと瑠璃光の胸に浮かんだ。自分と千手丸とは幼い折から機根が違って居る。