Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans
(一)の四
己には始めから、選択と云う事が許されて居なかった。己は小学校の尋常科を卒業すると、間もなく父親の命令に依って奉公にやられた。奉公にやられると云う事は、つまり実業の見習いをする事だから、其の時既に己の前途は、実業の一方面に限られてしまったのだ。否でも応でも、己は実業家になるより外に、道が開かれて居なかったのだ。金持ちの子供に生れて、中学から高等学校へ入学して、自分の好きな学科や職業を択び得る人々とは、大分育ちが違って居るのだ。
それに又、己は幼い時分から、極度に貧窮な家庭の暮らしを見て居たので、生活難の問題が非常に鋭く頭を刺戟した。三度のおまんまが無事にたべられて、その日その日を安全に過して行ける境遇を獲得するには、可なりの才能と力量とを要するように考えて居た。食うと云うこと、即ち金を得ると云う事が、生きて行くのに第一の必須条件であると思った。従って、実業家になれば物質上の富が作られる訳だから、己は商店に奉公する事を、必ずしも自分の為めに不利益だとは感じて居なかった。
(一)の四
けれども、飽く迄も着実性を缺いて居た己の心は、「偉大なる実業家」と云う目的に向って、一歩一歩適確に、辛抱強く進んで行くのに耐えなかった。