Classiques japonais avec furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans
自分には御佛の加護がある。自分が今、運よく「来世の応報」を想い出したのも、必ず御佛の加護に違いない。来世と云うものがある以上、自分はどうして佛罰を恐れずに居られよう。来世の希望があればこそ、上人はわれ/\に現世の快楽を禁ぜられたのであろう。千手丸は信じて居ないようであるが、自分は飽く迄も来世を信じ、佛罰を信じよう。それでこそ始めて、自分の機根が優れて居ると云えるではないか。上人が自分を褒めて下すったのは、此処のことを云うのではないか。
その考は、たとえば天の啓示のように瑠璃光の頭上に降って来た。最初は電光の如く閃々ときらめいて居たものが、次第に海の波濤の如くひろがって、ひた/\と瑠璃光の魂を浸し、全身に漲って来た。そのすが/\しい、嚠朗たる音楽に酔って居るような心持は、三昧の境地に這入った行者でなければ味い得ない、貴い宗教的感激であるかのように覚えたのであった。瑠璃光は我知らず掌を合わせて眼に見えぬ佛を拝んだ。そうして、胸の奥で次の言葉をつゞけざまに繰り返した。
「しばしの間でも今生の栄華に心を移して、来世の果報を捨てようとした愚かな罪を、どうぞお許し下さいまし。