Classiques japonais avec furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans
自然派の文学者が金科玉条とする所の、主観排斥の議論や、平面描写主義や、無技巧主義などに、絶対的の権威を認める価値のない事は、己にも直ぐに分ってしまった。
己はその時こんな風に考えた。―――己のような素質を持った人間の頭に宿って居る、美しい幻影や空想の世界の中に、藝術が存在するのではなくして、何等の主観をも想像をも交えずに、たゞ自然界の現象の上面ばかりを模倣した、所謂自然派の小説がほんとうの藝術であるとしたら、藝術と云うものは撰ばれたる少数の天才の事業ではなくて、寧ろ卑しい、誰にでも出来る凡人の職業であると。或いは藝術が凡人の職業であっても一向差支えないかも知れないが、己はどうしても藝術の位置を、そんなに安っぽく見たくなかった。藝術と云えば、何だか人間の仕事の内では、一番神様の仕事に近い、高尚な、幽玄な、云わば現象の底を流れて居る宇宙永遠の実在とでも云うようなものを、暗示するに足る貴い事業だと思いたかった。己の信ずるように解釈してこそ、藝術は天才の主観の奥から生れて来るのだと云う事が出来る。斯くて始めて、真の天才は想像の翼を搏って人間の住む地上から高く高く、白雲の裡に舞い上り、オリンプスの神々と共に、永遠の美を語り合う資格があるのだと云う事が出来る。