Classiques japonais avec furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans
なぜ藝術は悪人を天へ昇らせる事が出来るか。―――と云うに、藝術的境地へ這入れば善も悪もなくなって、たゞ美があるからである。そうして、美は人間に解脱の方法を教えるからである。
ところが、己のような悪人が、若し藝術家になる事を禁ぜられるとすれば、その生涯は極めて危険である。己は己の頭の中にある想像を、藝術的作品に発表する事が出来ない結果、勢い実生活の方面に吐き出さざるを得なくなる。己はいろ/\の犯罪をやる。社会的に堕落する………しまいには何をやり出すか分りゃしない。
生活其の物を藝術にする。などゝ云う考えは、云うべくして容易に行われ難いものだ。人間は長い間の習慣に依って、良心と云うものを持って居る。藝術の世界で許されて居る「悪」を、一旦実行の方面に移すと、われわれはすぐに良心の苛責を受ける。良心と云う奴は、今では殆んど先天的の不可抗力を以て、人間の胸に喰い込んで居るから、その桎梏を破壊する事は、到底出来ない。強いて破壊しようとすれば、ます/\苦悶が加わって来て、懊悩の極は発狂するような始末になる。技巧を以て、実生活を藝術に一致させようとしても、既に実生活である以上は、やっぱり道徳律の制裁がある。