Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

こぞうのゆめ

潤一郎ラビリンスV――少年の王国

谷崎 潤一郎

Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans

Aozora Bunko

睾丸を取られても知らずに居るのです。可哀そうなものです。」

見物人はどっと笑った。そうして、以前の怒罵の声に引き換えて、始めて彼の女の魔力を承認したような拍手の響きが盛んに起った。

己はその時、自分は決して本当に眠っては居ない、眠った真似をして居るのだと感じつゝあった。己の耳には、メリー嬢の得々として語る説明の言葉も、黒ん坊の無礼極まる冗談も、見物人の哄笑も、残らず聞えて居る。少くとも己は、自分が今何処に居て、何をしているかと云う意識だけは失わずに居る。自分が浅ましい真似をして、満座の中で辱かしめを受けて居る事も知って居る。見物人が声を揃えて、どっと笑いどよめいた時、

「馬鹿にして居やがる。己は眠って居やしないのだぞ。睾丸を取られても知らずに居るような頓馬では無いのだぞ。」

こう云って、己は椅子から跳ね起きて、怒鳴ってやろうかとさえ思った。跳ね起きようとすれば、いつでも跳起きられる、怒鳴ろうとすればいつでも怒鳴り得ると思った。にも拘らず、己はどうしてもそうする事が出来なかった。どうしてもそうする事の出来ないような、不思議な力が、一方に於いて己の心を抑えて居た。