Classiques japonais avec furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lisez 火の扉 (ひのとびら) de 岸田 国士 (きしだくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 467 caractères · 257 écrans
「いや、こんなことは別に改まつてご相談するつもりはなかつたんですが、つい、なんだか……」
そこで、彼は口をつぐむ。語尾をにごすような物の言いかたは、彼にしては珍しいのである。
「つい、なんだか……じや変だわ。はつきりおつしやいよ」
「それがはつきり言えないんですよ。どうも、奥さんの前じや、ぼくは、万年候補生で……」
「あら、いやだ、ひとをあんまりおばさん扱いにしないでちようだい」
と、彼女は、ついそう言つてしまつて、ひやりとした。こんな軽口が自分のどこから出たのだろうと思つた。男相手に左右の女が口にする紋切型のじようだんを、彼女は、あれほどきらつていたのに。
が、この一言は、中園を元気づけたかにみえた。
「そうおつしやるなら、言いますがね。今の奥さんにはぼくの立場がよくわかつていたゞけると思つたからです。さつき、娘が育つか育たないか、運を天にまかせるなんて言いましたけど、その運つていうやつのなかには、よく考えてみると、ぼくたちの将来の……まあ、早く言えば、娘にとつては第二の母……」
「あなたにとつては第二の妻でしよう。お探しなさい。きつとちようどいゝ方がみつかつてよ」