Classiques japonais avec furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans
ぼらしいもので、押入を開けると、そこには隣家の灯影が差していたこと、行くとすぐ、そっくり東京のデパアトで誂えた支度が、葉子も納得のうえで質屋へ搬ばれてしまったこと、やっと一つ整理がついたと思うと、後からまた別口の負債が出て来たりして、二日がかりで町を騒がせたその結婚が、初めから不幸だったことなどが、来るたびに彼女の口から話された。美貌で才気もある葉子が、どうして小樽くんだりまで行って、そんな家庭に納まらなければならなかったか。もちろん彼女が郷里で評判のよかった帝大出の秀才松川の、町へ来た時の演説と風貌に魅惑を感じたということもあったであろうが、父が望んでいたような縁につけなかったのは、多分女学生時代の彼女のロオマンスが祟りを成していたものであろうことは、ずっと後になってから、迂闊の庸三にもやっと頷けた。
「私たちを送って来た従兄は、一週間も小樽に遊んでいましたの。自棄になって毎日芸者を呼んで酒浸しになっていましたの。」
彼女は涙をこぼした。
「このごろの私には、いっそ芸者にでもなった方がいいと思われてなりませんの。」
戦争景気の潮がやや退き加減の、震災の痛手に悩んでいた復興途上の東京ではあったが、まだそのころはそんなに不安の空気が漂ってはいなかった。