Classiques japonais avec furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lisez 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 327 364 caractères · 638 écrans
ある日庸三は、ふと神田の下宿を訪ねてみた。横封に入れた金を、師匠に托してから、いくらかの日がたっていた。
金を師匠に届けに行った時、清川もちょうど彼女の側にいたが、師匠は取っていいものが悪いものかと、少し躊躇していた。
「まあ、そんなに?」
「しかし私も後の気持が悪いから。」
「ではお預かりしておきますわ。あの人のことですから、一時にあげてもどうかと思いますがね。」
「それも貴女にお任せします。」
「いや、それはやはり貴女の保管すべきものじゃないだろうね。」
清川が言うと、師匠も軽く額いた。
「そうね。」
そんな簡短な会話が取り交され、ちょうど地震があったので、庸三と師匠が踊りの床へ上がって、窓の方へ出て見たが、間もなく暇を告げた。
そのころ庸三の家に、年少の詩人が一人いた。小池史朗というその詩人は、その肉体から言っても性癖から言っても、不思議な存在であった。葉子との郷里の縁で庸三を頼って来たものだったが、詩の天才的才分は、庸三も認めないわけに行かなかった。朝から晩まで着たきりの黒サアジの背広に赭いネクタイ、それにベレイを冠った彼の風貌は、体の小さいせいもあったが、生白い皮膚も筋肉も気持のわるいほどふやふやしていて、大抵の人に男装の女子と看られるのに無理はなかった。