Classiques japonais avec furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lisez あらくれ de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 119 451 caractères · 236 écrans
その頃鶴さんは、鳥打帽をかぶって、自転車で方々の洋食店のコック場や、普通の家の台所へ、自家製の鑵詰ものや、西洋食料品の註文を持ちまわっていた。
先の上さんが、肺病で亡ったことを、お島はいよいよ片着くという間際まで、誰からも聞されずにいたが、姉の口からふとそれが洩れたときには、何だか厭なような気もした。
「先の上さんのような、しなしなした女は懲々だ。何でも丈夫で働く女がいいと言うのだそうだから、島ちゃんなら持って来いだよ」姉は肥りきったお島の顔を眺めながら揶揄ったが、男のいい鶴さんを旦那に持つことになったお島の果報に嫉妬を持っていることが、お島に感づかれた。死んだ上さんの衣裳が、そっくりそのまま二階の箪笥に二棹もあると云うことも、姉には可羨しかった。
結納の取換せがすんで、目録が座敷の床の間に恭しく飾られるまでは、お島は天性の反抗心から、傍で強いつけようとしているようなこの縁談について、結婚を目の前に控えている多くの女のように、素直な満足と喜悦に和ぎ浸ることができずに、暗い日蔭へ入っていくような不安を感じていた。養家にいた今までの周囲の人達に対する矜を傷つけられるようなのも、肩身が狭かった。