Classiques japonais avec furigana
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さまようまちのさまよういえのさまようひとびと
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
国枝 史郎
Lisez さまよう町のさまよう家のさまよう人々 (さまようまちのさまよういえのさまようひとびと) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 37 916 caractères · 75 écrans
十三
朝になった時卓上電話のベルが、けたたましい音を立てました。
受話器を耳へ押えつけると、
「妾絹子でございますが」
と、絹子夫人の声がしました。
昨日柵家から帰える時、夫人へ私のアドレスと、電話番号とを云って置いたので、それでかけて来たのでしょう。
(何か事件が起こったと見える)
そう思って私はヒヤリとしました。
「何か事件が起こりましたか?」
「初枝が変なものを受け取りましたので」
「何んですか、変なものとは?」
「手紙なのでございますよ」
「手紙? ははあ、誰からの手紙?」
「差し出し人が解らないのです」
「…………」
「花売娘が持って来たのです」
「花売娘、こいつは詩的だ」
「まあ、そんなご冗談を。……今朝初枝が寝巻のままで、裏庭を歩いて居りますと、可愛らしい花売の娘が来て、花を買ってくれと云ったのだそうです。それで初枝が買いましたところ、花束の中に有りましたそうで。手紙があったのでございます」
十三
「どんなことが書いてありましたかな?」
「申し上げにくいのでございますが……」
「私に関することですかな?」
「はい、そうなのでございます」
「では、私には見当がつきます。私という人間を近づけるな、近づけると恐ろしい目に逢うぞと、こんなことが書いてあったのでしょう」