Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

Lisez 上杉謙信 (うえすぎけんしん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 102 caractères · 256 écrans

Aozora Bunko

当然。そこへ迫るときは、謙信の旗本も、信玄の旗本も、たがいに体と体のぶつかるほど、混み合っていた。

けれど、彼もこれも、殆ど、横の敵を意識しなかった。

武田方の旗本は、信玄の万一を思い、上杉勢の旗本もまた、謙信の身を案じて、双方ともにその燃ゆる眼や凄じい姿勢の前には、ただ主君の安危如何があるだけで、それ以外の何ものもなかったのである。

このとき謙信は単騎、信玄の営中に駆け込み、信玄その人を眼に見、しかも小豆長光の一颯、また二刃も空しく、わずかに信玄の右腕に軽傷を与えたのみで、敵の原大隅に邪げられ、槍の柄で乗馬の尻を打たれたため、放生月毛は、彼を乗せたまま、跳ね驚いて、猛然、そこの陣営から横ざまに駆け出して来た。

「あッ――」

名状すべからざる混乱中でまだよかったともいえる。木の根にでも躓いたのか、放生月毛は前へのめった。そして謙信は勢いよく落馬していた。

追い慕った原大隅、その他、幾つかの槍は、

「得たり」

と、われがちに、謙信のすがたを臨んで、おどり蒐る。

「あなや。御危急」

上杉方の旗本が、何で看過していよう。どっと、横ざまに驀走。

「ござんなれ」