Classiques japonais avec furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans
女人の胸には、男の体に備わって居ない、ふっくらとふくらんだ、豊かな乳房があることだけはたしからしい。たゞそれだけがおり/\おもい出されるけれども、それから先は、まるきり想像の及ばない、前世の出来事のようにぼやけて居る。………」
夜になると、上人のお次の部屋に枕を並べて眠る二人は、こんな工合にひそ/\話をするのであった。
「女人は悪魔だと云うのに、そんな優しい乳房があるのは不思議ではないか。」
こう云って瑠璃光丸が訝しめば、
「成る程そうだ、悪魔にあんな柔かい乳房がある訳はない。」
と、自分の記憶を疑うように、千手丸も首をかしげる。
二人は幼い頃から習い覚えた経文に依って、女人と云うものが如何に獰悪な動物であるかを、よく知って居る筈であった。しかし女人が、いかなる手段で、いかなる性質の害毒を流す物であるかは、殆ど推量する事が出来なかった。「女人最為二悪難一一。縛着牽レ人入二罪門一」と云う優填王経の文句だの、「執レ剣向レ敵猶可レ勝、女賊害レ人難レ可レ禁」と云う智度論の文句から察すれば、女人は男子を高手小手に縛めて、恐ろしい所へ曳き擦って行く盗賊のようにも考えられた。