Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans
「ねえお嬢様、藝術と云うものは、どう云う人間がどう云う目的を以て、作るのでしょう。」
己は押し返して二の矢を放った。するとお嬢様は再び鼻先でせゝら笑って、
「庄太郎、お前は藝術家になる積りなの。」
と、冷やかすように仰しゃった。己は藝術家の何たるかを知らないのだから“Yes”とも“No”とも答える訳に行かなかった。それ程己は、お嬢様の冷やかし文句を、真面目に受け取って居たのである。
「お前のような人間が藝術家になるのさ。どら焼を焼くよりか餘っぽどいゝわ。」
と云って、お嬢様はおかしくて溜らないような眼つきをなすった。己は又顔を真赤にした。
どら焼なる物は、銀座の大通りに売って居る屋台の駄菓子の事だが、己の醜い容貌が其のどら焼に似て居ると云うので、お嬢様がお附けになった仇名なのである。一体お嬢様は、非常に器量自慢の方で、どちらかと云えば意地の悪い、そうしてお転婆な女学生であった。内の店員は、己ばかりでなく、悉くお嬢様から仇名を頂戴して居る上に、度び度び愚弄されたり嘲られたりして居るので、誰も彼も蔭ではあんまりお嬢様をよく云わなかった。口にこそ出さないけれど、心から熱烈にお嬢様を崇拝し尊敬して居るのは、己一人であった。