Classiques japonais avec furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans
正直で篤実で、老練な先生だと云う事になって居た。
貝島がM市へ来てからちょうど二年目の春の話である。D小学校の四月の学期の変りめから、彼の受け持って居る尋常五年級へ、新しく入学した一人の生徒があった。顔の四角な、色の黒い、恐ろしく大きな巾着頭のところ/″\に白雲の出来て居る、憂鬱な眼つきをした、ずんぐりと肩の圓い太った少年で、名前を沼倉庄吉と云った。何でも近頃M市の一廓に建てられた製糸工場へ、東京から流れ込んで来たらしい職工の忰で、裕福な家の子でない事は、卑しい顔だちや垢じみた服装に拠っても明かであった。貝島は始めて其の子を引見した時に、此れはきっと成績のよくない、風儀の悪い子供だろうと、直覚的に感じたが、教場へつれて来て試して見ると、それ程学力も劣等ではないらしく、性質も思いの外温順で、むしろ無口なむっゝりとした落ち着いた少年であった。
すると、或る日のことである。晝の休みに運動場をぶらつきながら、生徒たちの餘念もなく遊んで居る様子を眺めて居た貝島は、―――此れは貝島の癖であって、子供の性能や品行などを観察するには、教場よりも運動場に於ける彼等の言動に注意すべきであると云うのが、平素の彼の持論であった。