Classiques japonais avec furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans
尤も沼倉組の方には、腕力の強い一騎当千の少年ばかりが集っては居るのだけれど、それにしても西村組の敗北のしかたは餘りに意気地がなさ過ぎる。殊に彼等は、誰よりも沼倉一人を甚しく恐れて居るらしい。外の敵に対しては、衆を恃んで可なり勇敢に抵抗するのだが、一と度び沼倉が馬を進めて駈けて来るや否や、彼等は急に浮足立って、ろく/\戦いもせずに逃げ出してしまう。果ては大将の西村までが、沼倉に睨まれると一と縮みに縮み上って、降参した上に生け捕りにされたりする。その癖沼倉は腕力を用うるのでも何でもなく、たゞ縦横に敵陣を突破して、馬上から号令をかけ怒罵を浴せるだけなのである。
「よし、さあもう一遍戦をしよう。今度は己の方は七人でいゝや。七人ありゃ沢山だ」
こんな事を云って、沼倉は味方の内から三人の勇士を敵に与えて、再び合戦を試みたが、相変らず西村組は散々に敗北する。三度目には七人を五人にまで減らした。それでも沼倉組は盛んに悪戦苦闘して、結局勝を制してしまった。
その日から貝島は、沼倉と云う少年に特別の注意を拂うようになった。けれども教場に居る時は別段普通の少年と変りがない。