Classiques japonais avec furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans
あれだけの人望と勢力とを以て、級中に悪い風儀をはやらせられたら其れこそ大事件であると思った。しかし、貝島は、幸い自分の長男の啓太郎が同じ級の生徒なので、それとなく様子を聞いて見ると、だん/\彼の心配の杞憂に過ぎない事が明かになった。
「沼倉ッて云う子は悪い子供じゃないんだよ、お父さん」
啓太郎は父に尋ねられると、暫くモジモジして、それを云っていゝか悪いかと迷いながら、ポツリポツリと答えるのであった。
「そうかね、ほんとうにそうかね、お前の云付け口を聞いたからと云って、何もお父さんは沼倉を叱る訳じゃないんだから、ほんとうの事を云いなさい。此の間の修身の時間の事は、あれは一体どうしたんだ。沼倉は自分で悪い事をして置きながら、野田に罪をなすり付けたりしたじゃないか」
すると啓太郎は下のような弁解をした。―――あれは成る程悪い行いには違いない。けれども沼倉は格別人を陥れようなどゝ云う深い企みがあったのではなく、実は自分の部下の者(即ち全体の生徒)が、どれほど自分に心服して居るか、どれ程自分に忠実であるかを試験する為めに、わざとあんな真似をやったのである。あの日のあの事件の結果として、沼倉は、級中の総べての少年が一人残らず彼の為めに甘んじて犠牲になろうとしたこと、そうしてさすがの先生も手の出しようがなかった事を、十分にたしかめ