Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 137 868 caractères · 278 écrans
次の間の唐紙を開けると、一間一パイの大仏壇、扉をあけると、燦爛たる仏具が眩しいばかりです。
「禅宗の仏壇にしちゃ大奢りだ、――もっともあまり線香やお灯明をあげた様子もないが」
「そんな事はございません」
「第一、ひどい埃じゃないか」
「なにぶん娘と二人の無人でございます。薬箱持ちの男はおりますが、それは通いで、夜は帰ってしまいますし、下女は一人おりますが、居睡りするより外に芸のない女で――」
石沢閑斎の説明する前に、平次はざっと四方に眼を配りました。門戸の大きいに似ず、恐ろしく流行らない医者らしく、内輪の苦しさは、仏壇の雄大さに似ず、貧しい調度にもよく判ります。
「昨夜はどこへも出なかったんだな」
「病人はありました、松永町の伊勢屋の隠居、――これはもう長い間の病人でだいぶよくなっていたんだが、近頃の暑さでぶり返しましてな」
「時刻は?」
「戌刻前に行って、亥刻ちょいと過ぎに帰りましたよ」
これより外に平次にも訊くことはありません。それから奥の部屋に、たった一人つくねんとしている娘のお澪に逢っていろいろ訊いてみましたが、父親が昨夜何刻に出て何刻に帰ったかも知らず、今朝佐久間町へ行ったことが知れて、ひどく父親に叱られた、という以外には何にも纏まったことは掴めません。