Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

Leggi 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 511.765 caratteri · 1011 schermate

Aozora Bunko

二

いつかわたしが話したように、わしの村でしかすえないお諏訪さまの禁厭灸のあとがある。そのわしの村でも、この背骨の節の四ツ目に、癲癇の灸をすえたのは、おらの子だけでございます」

「じゃ、この蛾次郎が、三つの時に、伊勢詣りのとちゅうで迷子にしたおまえさんの子であったのか」

「それにちがいありません。ああ、親子の血はあらそわれない、やっぱりわしにはなんとなく、虫の知らせがありましたに……」

と、蛾次郎のからだを抱きしめて、あまやかな女親の涙をとめどなく流すのだった。

蛾次郎はただキョトキョトして、お時の手をすこしこばむように尻ごみしていたが、宮内からじゅんじゅんと自分の母であることを話されると、東海道で、鼻かけ卜斎にひろわれたという幼な話を思いだして、

「じゃ、おめえが、ほんとのおれのおッ母さんだったのかい」

と、はじめて、お時の顔を真正面に見つめた。

「オオ、坊や!」

「ワーッ……」

と、そのとたんに、蛾次郎は、一世一代の泣き声をあげてお時のひざにそのきたない顔を、むちゃくちゃにコスリつけていった。

お時もうれし泣きに抱きしめた。

牝牛の乳のように甘い女親の涙のなかに、邪気も、慾も、なにもなく、身をひたりこんだ蛾次郎のすがたを見ていると、だれもかれに少しの憎しみも持てなかった。