Classici giapponesi con furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Leggi 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 511.765 caratteri · 1011 schermate
そして、裾のほうには女でも山国のものは穿く、もんぺという盲目縞の足ごしらえ、尻の切れた藁草履が、いっそうこの女の人の境遇を、いたいたしく感じさせていた。
「おや?」
と、小文治は、直覚的にはね返った。
すべての空気が、この女が、いまにも濠へ身を投げそうなことを教えたからである。
案の定――女は泣きぬれた眼で、躑躅ヶ館を、うらめしげににらんでいたかと思うと、また、悲しげな声で、濠のそこへ良人の名と、むすめの名らしい声を呼びつづけた。
そして――あッ――と思うまに、手を合わせて、月光の水へ身をおどらせようとした。
「――待てッ」龍太郎は飛鳥のように馳けて、女の体をうしろへ抱きもどした。女は、なにか口走りながら、そのとたんに、ワッと柳の木の根もとへ泣きくずれてしまう。
「――見うけるところ、良人もあろうし、幾人かの子供もあろう人妻ではないか。なぜそんな短気なことをいたす。苦しい事情があろうにもしろ、浅慮千万……」
と、たしなめるように強くしかった。
返辞はない。
しゅく、しゅく、と泣く声ばかりが、ふたりの足もとにうったえていた。
だが――やがてやっと事情を聞きとると、この女房の死ぬ気もちになったことを、ふたりはもっともだと思わずにいられなかった。