Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate

Aozora Bunko

一同が出払ったと見て、次郎もつづいて表門へ走り出して行く。

逃げた! 逃がすな! という声が入り乱れて聞こえる。今さらそこでそんな間の抜けた叫び声がするようでは、もう道中師の伊兵衛も馬春堂も、この峡谷を一散に、足の限り根かぎり逃げ出しているに違いありません。

「馬小屋ッ、馬小屋ッ」

たれともなくこう急き立つ。

チャリン、チャリン、チャリン、あわただしい轡の音。

人魂のような松明を振り廻して、峡谷の暗へ飛び出す者。

その間に、それを指図しそれを追わせる、御隠家様の罵りがひびき渡る。

次郎も一匹の裸馬を引ッぱり出して、ヒラリと背なかへ取ッつきました。

この峡谷は前にも説いたように、秩父越えにかかる峠道か、あるいは、武蔵野へ下る一路のほかありません。逃げる者の自然な原則として、その高き難路へ向うよりも、やすき低地へ向ったろうと思われるので、次郎は裸馬の尻をなぐりつけて、逆落としに追いかけました。

夜風に逢うと般若の仮面は、その魂を呼びよせて、生けるが如く見えました。それを顔につけて裸馬に乗った次郎は、何か、自分が華やかな戦陣にでも立ったようにおどり立って、こうして、いつまでも曲者の捕まらない成行きを、かえって愉快に感じています。