Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate

Aozora Bunko

投扇興

投扇興

ふと――

刀の柄糸の縺れを見つけて、それを気にしてつくろいだすと、いじればいじるほど解けて来て、果ては、しまつが悪くなったので、糸切歯をあててプツンとかみましたが、その糸屑も唇にくわえたまま、なぜか、相良金吾の目にいつまでも、消えない怒りが燃えていました。

刀は持ち人の心をうつす。

心の腐ッた持ちぬしの手にあれば、柄糸も性がぬけて縺れ出すか。

どうにもならない解れ糸。――今の自分の心がちょうどそれともいえる。

もう近頃では、この愛刀来の了戒さえ抜いてみる気になれない自分だ。おそろしくて抜けないのである。

破邪顕正そのものの光、偽りを許さぬ剣の光の前に、暗鬱な、邪心を押しかくした心をもって、なんで抜いてみる気になれようか。なんで、じッと、それに対して目を背けずにいられようか。

ふしぎです。

刀は人の持つものでありながら、かくまで人を支配します。心おおらかな時は、それに怯みなく、心よこしまな時は、自分の刀とて、鞘を払って見ることができません。

――それを感じて、金吾は、自分というものに、強い侮蔑を投げたのでした。

「武士か! 貴様は」

かれの矛盾した心は、二ツの相良金吾という人間に苦しめられているようです。