Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
「おお!」
と、のび上がって前をのぞくと、覚えのある出目洞白の面箱を中心に、ガヤガヤと多勢の声が騒ぎ立っている様子ですが、それを一目見ると、かれは周囲の人間も場所も忘れて、思わず、
「か、買った!」
と、夢中に手を振ってしまったものです。
けれど幸か不幸か、単に買ったというだけでは、市の通用語をなさないので、かれの絶叫は一顧もされず、面箱は他の糶声にドンドン値を争われている。
金吾は当惑して、気が気ではあるまい。人手に取られては大変な品、ことに、けいず買いの手に移ったが最後、どこへどう行ってしまうか知れたものではないのですから。
と言って――いかにかれがこの切迫にワクワクしても、すべての声が符牒なので他の形勢がさっぱり分らない。およそ幾らくらいな値に行っているのか、何をワイワイやっているのか、てんで見当がつかないのですから、それらを圧倒して自分の手に落す一声がかれの口から言えッこはないのであります。
釘勘は? 釘勘は? オオ釘勘はどこへ行ったのかと今になってあたりを見廻すのもすでに遅い話で、頼みにしていたその釘勘は、あなたにいる日本左衛門の射るような視線をよけて、人の足元から荷行李の積んである蔭へ土龍抜けに隠れている。