Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
脆くも、そう観念の目を閉じて、彼女は突然、自分の刃を自分の乳へ当てようとする。
はッと驚いた久米之丞が、刀を引いて、飛びつこうとしたはずみに、その短剣は飛魚の如く、おのれの素面へ風を切って来ました。
あぶなく顔の真ン中に穴のあくところを、身をかわした久米之丞が、ふと見ると月江はもう彼方へ脱兎――
「ちッ、畜生、逃してなるものか」
踵を蹴って追いかけることも、あまり永くはありませんでした。
疎林を抜けた途端です。
引ッつかまれた帯の端に、それが解けて、月江の体がくるくると無残に廻って倒れたかと思いますと、――どどどどッ――と足元の土が地崩れのようにメリ込んで、
「おっ!」
と、久米之丞も、咄嗟にそこの岩藤の根にすがらなかったら、奈落の谷底へ誘われたかも知れません。
「アア、あぶねえところ……」
思わずホッとつくため息。
人間の心の機微、必ずやその時は、獣情に燃えていた久米之丞も、冷やりとするのと一緒に、命びろいをしてまア好かった――と思ったことは思ったでしょう。
が――気がついてみますに、そのよろこびもホンのつかの間。かんじんな、月江の姿が消えている……。