Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
「おい、旅の衆、お湯におはいり」
湯まであるのは勿体ない気がすると、なかば怖れながら、裏の風呂にゆくと、それも真っ黒な荒小屋ですが、野天風呂ではありませんし、次に来た食事の膳も、なかなか器用なものを食べさせるには驚かされる。
「だが一体、ここの家には主人がないのかしら」
「さあ、分らねえ」
「先刻、山の方に見えた、三角の屋敷はなんだろう」
「分らねえな、どうも」
「そして、何という所だい」
「なお分らないよ。何もかも分らねえ。おれもずいぶん旅をしたが、こんな山奥に、こんな土地のあるのを聞いたためしがない。――秦野屋の兄貴などは、相当に年をとっているんだから、何か、見当がつかねえかな」
黙りがちな九兵衛へ、新助がこう尋ねますと、九兵衛は初めて口をひらいて、
「ウーム、最前から、わしもずいぶん考えていたんだが、ここへ着いてからやっと分った。何しろ、ちょッと鬼門へ向いて来たよ」
「えっ。じゃ、何か凶いところへ踏み込んで来たのかな?」
その時です。
どこかで、カアーン……という鐘の音が、夢幻的な尾をひいて永く鳴りました。谷のような地形では、木の実の落ちる音さえ高く聞こえるのに、四方、山ばかりに囲まれた盆地の鐘、なんともいえない余韻です。