Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
と、お蝶の顔を見てげらげらと笑っている。
「ねえさん、これから何処へ行くんですか?」
「何処へも行きゃあしないさ。こうしてね、ぼつぼつ商売を始めるんだよ。そのうちに、亡者がやってくるから、そしたら、私のいう通りにすればいい」
商売? 亡者? お蝶にはだんだんお角の言う事が分らなくなりました。――しかしお角の言ったとおり、苫舟の中の置炬燵は、辛く当る風もなく、ぴちゃりぴちゃりと船底をうつ川波の音を聞きながら、手足を蒲団に埋めていると、ほんとに呑気で、いつまでもここを出たくない気がする。
すると、そのうちに上の土橋を踏んで行く人の跫音がする度に、お角は、炬燵の中から片手をのばして、苫の横から顔を出します。そして、
「ちッ。……二本差の浅黄裏だよ」
舌打ちをして、何か、じれッたそうに首を振りながら、
「引き汐の大川みたいに、年の暮は人の足が早くッてしようがないね」とお蝶に向って言いましたが、これもお蝶には、何の意味だか分りません。
けれど、いくら切支丹屋敷という別世間に育ったお蝶にでも、それから夜更けにかけて、橋の上から声をかける男だの、苫の下から鼠鳴きをするお角のことばだのが、幾度となく繰返されるうちには、この苫舟の世帯が、何を営むものだかという事を覚らぬわけはありません。