Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate

Aozora Bunko

お蝶の思案は後ろから来る空ッ風に、千断れ千断れに飛んで行く。

着物だけは、どうにか垢を落としたものの、今夜の宿の当てはないし、二度とふたたび観音様の縁がわにお慈悲を仰ぐ勇気もありません。

町は押しつまる年の暮で、血眼の人達は、誰も自分を怪しまない代りに、誰も自分に温かいことばをかけてくれてもない。

田舎は親切だが猜疑ぶかいし、都会はうるさくない代りに素ッ気ない人ばかりと、お蝶はぼんやりと暮の巷を見廻しましたが、はッと、その顔色を変えました。

「畜生ッ、あんな所に」

「あら、居てよ、お蝶ちゃん」

不意に、こういう声を筒抜けにさせて、お蝶を目がけて駆け出して来た者がある。――と、彼女はもう袂をひるがえして逃げ出していました。

「畜生」

「お蝶ちゃん、お待ちッてば」

売女宿の鶴吉と船まんじゅうのお角が、腰弁当で探してでもいたように、声をあげながら追いかけて来る。

何処という方角も知らずに、横丁から横丁へ逃げ廻って、そして逃げながらお蝶は考えているのでした。「捕まろうか、捕まるまいか」と。

捕まれば目前に食物と寝床は与えられますが、売女宿の食い物となる覚悟がなければなりません。