Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

Leggi 源頼朝 (みなもとよりとも) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 306.118 caratteri · 613 schermate

Aozora Bunko

――では、やがて山木の目代邸に、火の手を見られたら、それと思し召されよ」

土肥実平のことばを機に、藤九郎盛長、仁田、天野など、刎頸の友の一群は、蓑や覆面のしずくに、武者ぶるいを見せながら、また降り出した暗い小雨の中を、どこともなく駈け去った。

「…………」

宗時は、その人々が、彼方にかくれるまで、黙然と見送っていたが、やがて、われに返ったように、岩山のみねへ攀じ上って行った。

そこから山之木郷の目代邸は明々と見えた。燎火や篝の光が低い雨雲に映って、真っ黒な天地の中に、そこばかりがぼうと美しい。

もう妹は輿を降りたろう。どんな心地で山木家の奥へ通ったろう。彼女は、兄や兄の友達を信じてはいるだろうが、それにしても妹の心には、あの華やかな燎火や部屋部屋の灯が、いかに辛く映っていることか。

「……今に。今に」

宗時は、じっと、歯の根をかみながら、政子を思い遣っていた。雨は小やみになった。雁が啼いてゆく。

刻、一刻と、宗時の胸には、婚礼の席にいる妹と同じような動悸を加えてきた。短い時間が半夜も過ぎるように思われた。

すると、突然、

「あっ、火っ、火が!」

と、そばにいた物見の兵がどなった。