Classici giapponesi con furigana
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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
Leggi 源頼朝 (みなもとよりとも) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 306.118 caratteri · 613 schermate
二
「むむ」
提げている梅の一枝に、兵たちも眼をとめる。心ない者も、よい枝ぶりと見るのであろう。
奥ふかい一室まで、彼はそれを提げて通った。香の薫りが常時にしていた。
「佐殿。よろしゅうござるか」
云うと、室の内から、
「弥兵衛か」
と、まだ年少な声がした。
関ヶ原で捕えられて先頃からここに幽閉されている囚人頼朝であった。
二
頼朝は円座を敷いて、木彫のように行儀よく坐っていた。
ふっくら豊頬な面だちであるが、やはり父義朝に似て、長面のほうであった。一体に源家の人々は、四肢逞しく、尖り骨で顔が長い。ちょうど南部駒のような血すじだと、よく平家方で悪口いうが、そんな傾きがないでもなかった。
山繭の白小袖に、藤むらさきの公達袴は、ここへ来てから与えられた物であるが、それも朝夕、自分で畳みつけているとみえ、まだ折目もくずれていない。
「ご退屈でしょう」
弥兵衛宗清は、対い合って、軽くなぐさめた。
頼朝は唇元に、笑靨をつくって、
「いいえ」
静かに、かぶりを振る。
そのふさふさした黒髪が、何とはなく、宗清の眼に沁みた。
髪ばかりではない。
きょうの如月の碧空を見るような眸も、朱い唇も、白珠の歯も、可惜、近日のうちには、土中になる運命のものかと思うと、見るに耐えないのであった。