Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

Leggi 源頼朝 (みなもとよりとも) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 306.118 caratteri · 613 schermate

Aozora Bunko

邦通は、頼朝の顔を見上げた。廂ごしに、夏近い雲が見える。が、頼朝の眼は、雲にはなく、山一重の伊豆山権現の空にあった。

「……いかがです。こよいあたりまた、お忍びあっては」

頼朝の気もちを察して、邦通はそっとすすめた。配所に家人もあり、出入りに人も数あるが、こういう事を平気で頼朝に云えるのは、彼ひとりしかなかった。

だから、頼朝を盟主とし、頼朝を名君としたがる謹厳な一部では、

(邦通をお側におくのはよくない。彼は、遊芸が巧者ばかりでなく口も巧い幇間的な人物だ)

と、蔑む者もあった。

けれど頼朝は、彼が好きであった。尠なくも雲雀よりは彼のほうを愛した。

「……参りたいが」

頼朝は、彼の誘いに、正直につぶやいた。

自分を繞る一味の若人輩が、政子を奪って伊豆山権現の一院へかくした後も、周囲の者の計らいで幾たびか会いに通ってはいたが、極めて監視のきびしい中で、恋というには余りに形だけの面談を遂げただけでしかなかった。

「お供しましょう」

気軽な邦通は、すぐにもと支度にかかり始めたが、頼朝はまだ決しきらず、

「盛長や定綱や、家人どもへ、無断で出ることもなるまい。と云うて告げれば、彼等がまた面倒に申すであろうし……」