Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
そうして、むやみに癇がたかぶって、訳もなしにいらいらした。夜もおちおちとは眠られなかった。このままに日を重ねたらば、自分も法性寺の阿闍梨の二の舞いになるのではあるまいかと、自分ながら危ぶまれるようになった。
家来も侍女共も主人の機嫌が悪いので、みなはらはらしていた。お気に入りの織部清治も毎日叱られつづけていた。ことに彼はさきの日、法性寺へ使いに立ったときに、阿闍梨の容態を確と見とどけて来なかったがために、大切の法要をさんざんの結果に終わらせたというので、いよいよ主人の機嫌を損じた。そのなかで寵愛のちっとも衰えないのはかの玉藻ひとりで、主人の機嫌がむずかしくなればなるほど、彼女は主人のそばに欠くべからざる人間となって、忠通が朝夕の介抱や給仕はすべて彼女ひとりが承っていた。
「よう降ることじゃ」
忠通は暮れかかる庭の雨を眺めながら、滅入るような溜息をついた。
「ほんによう降り続くことでござりまする。河原ももう一面に浸されたとか聞きました」と、玉藻もうっとうしそうに美しい眉を皺めて言った。
「また出水か。うるさいことじゃ。出水のあとは大かた疫病であろう。出水、疫病、それにつづいて盗賊、世がまた昔に戻ったか。