Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
二
その雲が通り過ぎると、下界は再び薄明るくなったが、空の鼠色はもう剥げなかった。
「雨たびたまえ。八大龍王」
玉藻が榊の枝をひたいにかざして、左に右に三度振ると、白い麻はすすきのように乱れて、黄金の釵子をはらはらと撲った。
「や、雨じゃ」
岸の上では一度に叫んだ。湿気を含んだ冷たい風が壇の四隅の笹竹を撓にゆすって、暗い空の上から大粒の雨がつぶてのように落ちてきた。
「八大龍王、感応あらせたまえ」
玉藻はすっくと起ちあがって再び叫んだ。ひたいの釵子は斜めに傾きかかって、黒い長い髪はおどろに振り乱されていた。その蒼白い顔を照らすように、大きい稲妻が壇の上を裂けて走った。
「雨じゃ、雨じゃ」
警固の侍までが空を仰いで声をあげた。瀧のような大雨は天の河を切って落としたようにどっと降ってきた。
二
甘露のような雨はその夜のふけるまで降り通したので、天の恵みをよろこぶ声ごえは洛中洛外に溢れた。彼らは天の恵みを感謝すると共に、玉藻の徳の宏大無量を讃美した。彼らばかりではない。忠通は小おどりして喜んだ。
「見い、あいつら。これほどの奇特を見せられても、まだまだ玉藻を敵とするか。