Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
「もう夜が更けた」と、泰親は陰った月の陰を仰いだ。「わしはすぐに屋敷へ帰る。千枝太郎も一緒に来やれ」
改めてなんの言い渡しはなくとも、これで彼の勘当はゆるされたのである。千枝太郎はよみがえったように喜んで、泰忠と一緒に師匠の供をして京へ帰った。帰るとすぐに、泰親はこの二人のほかに優れた弟子の二人を奥へ呼び入れた。いずれも河原の祈祷に幣をささげた者どもである。師匠は四人の弟子たちに言い聞かせた。
「千枝太郎の訴えで何もかもよく判った。かの古塚へ夜な夜な詣る怪しの女はまさしく玉藻に極わまった。察するところ、かの古塚のぬしが藻という乙女の体内に宿って、世に禍いをなすのであろう。就いては泰親の存ずる旨あれば、夜があけたら宇治の左大臣殿にその旨を申し立て、かの古塚のまわりに調伏の壇を築いて、かさねて降魔の祈祷を試むるであろう。鳥を逐わんとすればまずその巣を灼くというのはこの事じゃ。今度こそは大事の祈祷であるぞ。ゆめゆめ油断すまいぞ」
有明けのともしびに照らされた師匠の顔は、物凄いほどに神々しいものであった。昼夜を分かたぬ連日の祈祷に痩せ衰えた彼の顔も、今度は輝くばかりに光っていた。