Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
杉の葉をすべって来る十三夜の月の光りが薄く洩れているので、手探りながらもどうにかこうにか見当はついた。多年人間が踏み込んだことがないので、腐った落葉がうず高く積もって、二人の足は湿った土のなかへ気味の悪いようにずぶずぶと吸い込まれるので、二人は立ち木にすがって沼を渡るように歩いた。
「千枝まよ、ありゃなんじゃ」
翁がそっとささやくと、千枝松も思わず立ちすくんだ。これが恐らくあの古塚というのであろう。ひときわ大きい杉の根本に高さ五、六尺ばかりかと思われる土饅頭のようなものが横たわっていて、その塚のあたりに鬼火のような青い冷たい光りが微かに燃えているのであった。
「なんであろう」と、千枝松もささやいた。言い知れぬ恐れのほかに、一種の好奇心も手伝って、彼はその怪しい光りを頼りに、木の根に沿うて犬のようにそっと這って行った。と思うと、彼はたちまちに声をあげた。
「おお、藻じゃ。ここにいた」
「そこにいたか」と、翁も思わず声をあげて、木の根につまずきながら探り寄った。
藻は古塚の下に眠るように横たわっていた。鬼火のように青く光っているのは、彼女が枕にしている一つの髑髏であった。