Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
十月もやがて終わりに近い日である。
都には今年の冬が俄に押し寄せたように、陰った底寒い日が幾日もつづいて、けさはめずらしく青々とした空をみせたかと思うと、どこからか忽ちにしぐれ雲を運び出して、大粒の霰がはらはらと落ちて来た。那須の篠原に狩り暮らしている三浦、上総の籠手の上にも、こうした霰がたばしっているかと千枝太郎は遠く思いやった。そうして、やがては彼らの矢じりに貫かれなければならない玉藻の運命をも思いやった。こうした考えに心を迷わせている間に、彼の祈祷はおのずとおろそかになった。その怠りがすぐに師匠の眼についた。
「千枝太郎。きょうは大事の日じゃ。おのれはならぬ。さがれ」
泰親は激しく彼を叱りつけて、祈祷の壇から追い落とした。そうして泰藤という他の弟子に代らせた。
その日の未の刻(午後二時)である。泰親は四人の弟子たちから青、黄、赤、黒の幣を取りあつめ、自分の持っていた白い幣と一つにたばねて、壇を降って縁さきに出た。折りから音を立てて降って来た霰のなかに、彼は東国の空を仰いで五色の幣を一度に投げあげると、四つの幣は宙を舞って元の庭に落ちたが、唯ひとつの白い幣はさながら白い鳥の飛ぶように、高い空をどこまでも走って行った。