Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
その燃えるような紅い空の下で音楽の響きが更に調子を高めると、花のかげから無数の毒蛇がつながって現われて来て、楽の音につれて一度にぬっと鎌首をあげた。そうしてそれがだんだんに大きい輪を作って、さながら踊りだしたように糾れたり縺れたりして狂った。千枝松はいよいよ息をつめて眺めていると、更にひとむれの男や女がここへ追い立てられて来た。男も女も赤裸で、ふとい鉄の鎖でむごたらしくつながれていた。
この囚人はおよそ十人ばかりであろう。そのあとから二、三十人の男が片袒ぬぎで長い鉄の笞をふるって追い立てて来た。恐怖におののいている囚人はみな一斉に象の前にひざまずくと、女は上からみおろして冷やかに笑った。その涼しい眼には一種の殺気を帯びて物凄かった。千枝松も身を固くして窺っていると、女は低い声で何か指図した。鉄の笞を持っていた男どもはすぐに飛びかかって、かの囚人らを片っ端から蹴倒すと、男も女も仰ざまに横ざまに転げまわって無数の毒蛇の輪の中へ――
もうその先きを見とどける勇気はないので、千枝松は思わず眼をふさいで逃げ出した。そのうしろには藻に似た女の華やかな笑い声ばかりが高くきこえた。