Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
二
彼女が我が家へはいるのを見とどけて、千枝松はぬき足をして隣りの陶器師の門に立った。年寄り夫婦は早く寝付いてしまったらしく、内には物の音もきこえなかった。彼は作り声をして呶鳴った。
「愛宕の天狗の使いじゃ。戸をあけい」
表の戸を破れるばかりに二、三度たたいて、千枝松は一目散に逃げ出した。
二
「あれ、鴉めがまた来おりました」
あくる朝は美しく晴れて、大海のようにひろく碧い空の下に、柿のこずえが高く突き出していた。その紅い実をうかがって来る鴉のむれを、藻は竹縁に出て追っていた。
「はは、鴉めがまた来おったか。憎い奴のう。が、とても追い尽くせるものでもあるまい。捨てて置け」と、父の行綱は皺だらけになった紙衾を少し掻いやりながら、蘆の穂綿のうすい蒲団の上に起き直った。
「千枝まが見えたら鳥おどしなと作って貰いましょ」
「それもよかろうよ」と、父は狭い庭いっぱいの朝日をまぶしそうに仰ぎながらほほえんだ。「夜はもう火桶が欲しいほどじゃが、昼はさすがに暖かい。孝行なそなたが夜ごとの清水詣で、止めても止まるまいと思うて、心のままにさせて置くが、これからの夜はだんだん寒くなる。