Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
お察し下さりませ」
頼長は夢から醒めたように眼を見据えて、その秀でたる眉をすこし皺めたが、忽ちに肩をそらせてあざ笑った。
「おお、判った。して、お身はその恋の取り持ちをたしかに兼輔に頼んだか」
「まだ打ち明けては頼まぬ間に……」
「頼長がまいって邪魔したか、それは結句仕合わせじゃ。兼輔はおろか、関白殿、信西入道、あらゆる人びとのなかだちでも、この恋は所詮ならぬと思え」
「なりませぬか」
「ならぬ、ならぬ。お身たちが恋を語るには兼輔などの柔弱者がよい相手じゃ」
言い捨てて立ち去ろうとする頼長のゆく手をさえぎって、玉藻は突き当たるばかりに彼の胸のあたりへ我が身をもたせかけた。
「じゃによって、身にあまる望みと申したではござりませぬか」と、彼女は怨ずるように泣き声をふるわせた。
「身にあまるというても程のあるものじゃ」と、頼長はあざけるように笑った。「天下を望むよりも大きい恋じゃ。しょせん成らぬのは知れてあるわ」
自分の胸のあたりへ蛇のように纒いかかっている女の長い黒髪を無雑作に押しのけて、頼長は沓を早めてあなたの亭の方へ行ってしまった。
玉藻はきこえよがしに声を立てて桜の幹に倚りかかって泣き崩おれたが、もうその人の影が遠くなったのを覚ったときに、彼女は俄に空を仰いで物凄い笑みを洩らした。