Classici giapponesi con furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Leggi 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 511.765 caratteri · 1011 schermate
二
「さては、それが伊那丸のゆだんであったかもしれぬ。忍剣、忍剣、ともあれ石櫃をここへ。また、小文治と龍太郎は、あるかぎりのかがり火をあたりにたき立ててください」
「はッ」
席を立った者たちが三つ脚のかがり火を、左右五、六ヵ所へ炎々と燃したてるまに、忍剣は、さきに梅雪の郎党たちが、湖底から引きあげておいた石櫃をかかえてきて、やおら、伊那丸のまえにすえた。
「こう見たところでは、蓋の合口に異状はないが」
「青苔がいちめんについているさまともうし、一ども人の手にふれたらしい点はみえませぬ」
「とにかく、蓋をはらってみい」
「心得ました」
と忍剣は立ちあがって、グイと法衣の袖をたくしあげ厳重な石の蓋をポンとはねのけてみた。
二
「や、やッ」まず忍剣がきもをつぶした。
「どういたした。なんぞ変りがあったか」
伊那丸もおもわず床几から腰をうかした。
「ちぇっ。これごらんなさりませ」
と、くやしそうに忍剣が石櫃を引っくりかえすと、なかからごろごろところがりだしたのは、御旗楯無の宝物に、似ても似つかぬただの石ころ。
「むウ……」
伊那丸は顔いろをうしなった。それはむりではない、武田家重代の軍宝――ことに父の勝頼が、天目山の最期の場所から、かれの手に送りつたえてきたほど大せつな品。